内部統制対策としての与信管理

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与信管理と内部統制

内部統制において、与信管理の観点から見た場合の代表的なリスクとコントロールについて触れておきたいと思います。

支払能力のない取引先と取引を行うリスク

経営状態が悪く支払能力が低い取引先と取引を行うと、商品またはサービスの対価を回収できなくなる可能性が高くなります。したがって取引をする前に、取引先の信用調査を行い、支払能力をきちんと把握しておく事が重要です。

代表的なコントロールとして、「取引先に対する信用調査」があげられます。

手続を統一化し、有効性と効率性を高めるためには、与信管理規程などに、信用調査をする必要があることを明記し、与信限度申請書などを整備し、その運用を担保することなどが必要となります。

取引先として適切でない相手先と取引するリスク

実態を持たない幽霊会社や反社会的勢力とのつながりを持った会社と取引を行うことで事件に巻き込まれたり、企業イメージを損なったりする可能性があります。自社が取引を行っても問題のない会社かどうか、きちんと確認しておく必要があります。具体的には、登記簿などの公文書を入手して分析したり、信用調査会社に調査を依頼し調査レポートを分析したりします。

取引額が高額な場合や特殊な条件による場合、あるいは事業提携など結びつきが強くなる場合などは興信所などを利用して経営者等の調査を行うことが必要になる場合もあります。

また、後のトラブルを未然に防止するためにも互いの権利と義務を明示し、これに合意した旨の契約書を締結しておくことも忘れてはいけません。

相手先の支払能力を超えて取引を行い商品・サービスを提供したにもかかわらず代金を回収できなくなるリスク(会社として許容できない信用リスクを負うリスク)

企業が収益を上げるためには、相応のリスクをとらなくてはなりません。販売活動における信用リスクも収益機会を得るため避けることの出来ないのリスクの一つです。しかし、リスクをとるにしてもリスクそのものが把握できなかったり、自社の許容できる水準を大きく上回ってしまって企業の存続を脅かすようなことがあってはなりません。

リスクをきちんと評価し、自社の許容できるリスクを認識した上で、その範囲内にリスクをとどめておく必要があります。自社が許容できるリスクを金額的に明示することで、売上の拡大とこれにより生じるリスクのバランスをとることが可能になります。

これを実現するためには、与信限度管理が有効です。

与信限度による取引の管理を行い、限度額を超える受注を禁止する、あるいはこうした取引に対してはアラームが表示されるようにしておく必要があります。実務上は、取引先の信用リスクに応じて、客観的に限度額が算出できるように社内で信用格付を設定し、これに基づいて取引を行うのが一般的です。

与信限度が守られないリスク

せっかく与信限度を設定しても、実際の運用時にないがしろにされてはまったく意味がありません。適切な与信限度が設定され、設定された限度が守られるような仕組を構築する必要があります。そのためには、まず与信限度額による運営が会社の意思決定であること、また、運用を徹底するためにその運用方法を従業員に対して周知する必要があります。そのためには、単に与信管理規程などの規程を定めるだけでなく、与信管理運用マニュアルなどを作成し、かつ研修を行うなどして、従業員に対して十分な教育と訓練を行う必要があります。

また、組織として、販売業務と審査業務を分離し、実際に販売を行う営業部門とは独立した形で審査部門を設けることも必要でしょう。販売活動を目的とする営業部門と取引先の審査を目的とする審査部が互いに牽制しあうことで、収益機会とリスクのバランスが取れるようにします。

ただし会社の規模や人的資源等を考慮し、審査部門を独立して維持することが困難な場合は、経理部門や財務部門に審査機能を持たせる場合もあります。これも難しい場合は営業部門内に審査機能を持たせることもありえますが、牽制機能を担保するため、少なくとも営業担当者と審査担当者は分けておく必要があるでしょう。

与信限度額はいつ何時、すなわち月末であれ、月中であれ、月末であれ超過することが許されない金額です。したがって、実際の運用にあたっては、取引先に対して有する債権残高を適時把握できるようにしておくことも必要です。現状の債権残高が与信限度額を超過しているかどうか、また現在いくら余裕が残されていて、いくらまでであれば追加の受注が可能なのかが分からなくては限度額管理を行うことができません。実務上は与信限度管理表などを用いて管理することが一般的です。

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