会社分析のポイント(5)~借入金・信用不安情報~
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会社分析のポイント(5)~借入金・信用不安情報~
リスクモンスター株式会社 メルマガ事務局
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<CONTENTS>
■与信管理講座「企業の評価ポイント」(第5回)
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~与信管理講座「企業の評価ポイント」~
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前回に引き続き、書籍『日本を元気にするリスモン式与信管理力』(2010年4月発行)
をもとに会社分析の評価ポイントをご説明してまいります。
第5回:会社分析のポイント(5)
今回は、【図表5-1】の15項目の企業情報のうち、⑭借入金⑮信用不安情報における
与信管理上のチェックポイントをご説明してまいります。
【図表5-1】
⑭借入金
a.借入先はどこか?
日本の会社において、借入状態の分析は極めて重要なポイントになります。欧米に比べて
資本市場が活発でない日本では、会社の資金調達の中心的な役割を担っているのは投資家
ではなく銀行からの借入金だからです。
仮に会社が赤字に陥ったとしても、銀行からお金を借り入れることができれば倒産することは
ありませんし、債権者へ不払いを起こすこともありません。銀行がその企業が困った時にお金
を貸してくれるかどうかを判断することは、与信管理上の会社評価においてはかなり重要な
ポイントとなります。
まずは調査対象となる会社がどこからお金を借りているのかを確認してみましょう。借入先に
ついては不動産登記簿の乙区の根抵当権者、抵当権者欄を見ればわかります。いちばん
良いのは、もちろん「担保設定がない」、つまり借入がないということですが、担保設定がある
場合でも、借り入れている先がどの金融機関なのかを確認することで企業の信用状態を評価
することができます。
一般に「メガバンク・都銀>地銀>第2地銀>その他金融業者」の順に融資の審査基準は
難しく、金利も低い傾向にあります。メガバンク・都銀や地銀などから融資を受けられていると
いうことは、少なくとも厳しい審査基準にかなうだけの信用状態を備えている可能性が高いのです。
逆に銀行以外の金融業者は銀行より融資基準が緩い分、高い金利で貸し付けを行っています。
そのため、銀行では融資を断られた会社が仕方なく高い金利で借入を行っていることが考えられ
ますので、銀行借入企業よりも信用状態はより低いと判断する必要があります。
b.借入水準は適正か?
借入金の有無と借入先をチェックした後は、借入規模が適正であるかどうかをチェックして
いきましょう。借入規模があまりに大きすぎると財務状態を悪化させます。返済ができない状態
になれば資金ショートを起こし倒産に至るので、ここも重要な評価ポイントとなります。借入規模
を見る指標として、本書では総資産をベースに見る借入依存度と呼ばれる指標をご紹介したい
と思います。
借入依存度(%)=借入金額÷総資産額×100(%)
これは総資産に対して借入がどのくらいの割合を占めるのかを示す指標です。借入は自己
資本と異なり、利息を付けて元本を返済していかなくてはならない有利子負債ですので、
この割合が大きければ大きいほど倒産の懸念は高まります。
詳細な決算書を入手できない場合は、この数値を割り出すために借入金額については
不動産登記簿の担保設定金額の合計金額を、総資産額については決算公告の資産の部の
合計金額を用いましょう。これで調査対象となる会社の借入依存度を知ることができます。
では実際に借入依存度がどのくらいの水準に達すると倒産が起きているのかについて、リスク
モンスターで割り出した借入依存度と倒産確率の統計データ【図表5-2】を見てみたいと思います。
いくつかの例外はあるものの、借入依存度が高い会社ほど倒産する傾向にあることはおわかり
いただけるかと思います。業種にもよりますが、借入依存度が60%を超えると借入負担が相当に
重荷となり、倒産が目立つ傾向が顕著に出ています。
【図表5-2】
c.借入金を返済していけるか?
bでは主としてストックの面から借入の負担度合いを評価することをご説明しましたが、フローに
視点を置いた指標での評価も併せて確認する必要があります。通常、借入金は資産を処分して
返済していくのではなく、企業が稼ぎ出した利益を元に返済していくからです。
これは、私たち個人が住宅ローン等を貯金などからではなく月々の収入から返済していくのと
同じことです。ここでは当期利益を返済原資と考えた借入返済年数を指標として考えてみましょう。
借入返済年数=借入金÷当期利益
この借入返済年数の計算をするにあたって、当期利益は決算公告の当期純利益の項目を
抜き出して計算します。この場合も借入年数が長ければ長いほど借入の返済条件とのズレが
大きくなりますので、それだけ資金繰りに詰まる可能性が高くなります。では、借入依存度と同じ
ように借入返済年数と倒産確率の相関関係【図表5-3】を確認してみましょう。
【図表5-3】
これを見ていただくと、返済年数が20年を超える時点までには業種によって数字のばらつきも
ありますが、返済年数が30年を超えるようなケースでは一律して倒産確率が高まっていることが
おわかりいただけるかと思います。
【チェックポイント】
●不動産登記簿に担保設定があるか?
●メガバンク・地銀などの一般金融機関からの担保設定があるか?
●ホームページ記載の取引銀行と担保権者の銀行に相違はないか?
●借入依存度が60%を超えていないか?
●借入返済年数が30年を超えていないか?
⑮信用不安情報
a.手形に関する情報
手形に関する情報として重要なのが不渡りに関する情報です。不渡りとは決済日に取引先の
当座預金口座に決済する資金が不足して、手形の支払いができなかったことを言います。
不渡りを6ヶ月以内に2回起こした会社は銀行取引停止処分という重いペナルティーを受け、
事実上の倒産状態に至ります。したがって、不渡り情報が出た場合は非常に危険度が高く、
すでに倒産する可能性があり得るということです。
b.業績に関する情報
インターネットなどによって業績悪化に関するマイナス情報が流れている場合、信用不安情報
として扱う必要があります。例えば、借入金が大きすぎて首が回らなくなっているとか、赤字が
続いて今度の決算では債務超過に陥るのではないかといった情報は信用不安情報としてイン
パクトの大きい情報です。
こうした取引先の決算内容に関する情報の中でも、特に問題が大きいと考えられるのが
「粉飾決算」に関する噂です。粉飾とは実際には赤字であったり、財務状態が脆弱であるのに
対外的な信用を得るために会社側が意図的に偽って黒字に見せたり負債を少なくして、
本当より内容のよい決算書を作成していることを言います。
粉飾の噂が出て明らかになれば、単に実際より財務状態が悪かったというだけにはとどまりません。
それまで偽りの決算書を信じて融資を行っていた銀行などは支援をストップするなどの措置を取る
ことが多いため、資金的な行き詰まり状態になる可能性が高いのです。
これは極めて緊急度の高い信用不安情報と言えます。
c.焦付に関する情報
焦付とは、取引先に対して有している売掛金などの債権が倒産などによって代金回収できなく
なることを言います。信用不安情報としての焦付情報の場合、調査対象となる会社の取引先が
倒産して代金回収ができなくなることを指しています。
販売先などが倒産して多額の焦付が生じた場合、赤字や資金繰り悪化などの事態に至ることも
多いため、情報収集で焦付情報をつかむことができた場合には、取引先の評価に反映させる
必要があります。
d.事件・事故情報
事件・事故情報は決算内容などに直接反映されにくい情報ですが、取引先の動向を予測する上で
大変有用な情報ということができます。
例えば、談合事件によって公正取引委員会の立ち入り検査が入り、課徴金などの審決が下ったと
すると、単に課徴金の支払いが負担になるだけではなく、地方自治体から数ヶ月にわたって指名
停止処分が下ることが多くなっています。公共事業への依存度が高い会社にとっては、指名停止
期間中は事実上の休業状態に追い込まれることになるわけです。日々の支払期日が迫る中で
現金収入がなくなりますので、資金繰りも悪化して倒産リスクは高まります。
このほかにも、脱税、詐欺などの法令違反による社長や役員、幹部社員などの逮捕、環境汚染
などの情報が手に入った場合、信用不安情報として評価を下げることを検討しなければなりません。
e.支払いぶりに関する情報
与信管理担当者の間では、会社の支払状況に関する信用不安情報は支払いぶりやペイメント
情報などと呼ばれています。取引先への支払いが遅れているという「支払遅延」や、
決済資金の不足により期日が迫っている手形と、期日を先に延ばした新しい手形を差し替える
「手形ジャンプ」の他、「給与遅配」「税金滞納」「支払条件の悪化」などがペイメント情報に
該当します。こうしたペイメント情報は、実際に資金不足が発生しているという点で、緊急性及び
危険度の観点で非常に重要な情報ということができます。こうした情報をつかんだ場合は、
必ず評価に反映させましょう。
f.そのほかの信用情報
ほかには、これまで取引していた仕入先が取引量を減らしているなどの「取引先後退」、
役員間や労使間でお家騒動のような紛争が生じているなどの「内紛の噂」、法的な倒産は
していないがすでに「夜逃げ」などをして事業休止状態に陥っているなどといった情報も、
必ず評価に反映させるべき危険度の高い情報です。
【チェックポイント】
<手形に関する情報>
●業界内の噂やネット上に手形の不渡りに関する情報がでていないか?
<業界に関する情報>
●業界内の噂やネット上に借入過大など借入に関する不安情報がでていないか?
●業界内の噂やネット上に債務超過などに財務状態に関する不安情報がでていないか?
●業界内の噂やネット上に粉飾決算に関する不安情報がでていないか?
<焦付に関する情報>
●主要販売先で最近倒産した会社はないか?
●業界内の噂やネット上に焦付に関する不安情報がでていないか?
<事件・事故情報>
●談合事件などにより地方自治体から数ヶ月に及ぶ指名停止処分を受けていないか?
●脱税、詐欺などの法令違反によって代表・役員が逮捕されていないか?
●廃棄物処理などにより、環境汚染事件は発生していないか?
<支払いぶりに関する情報>
●業界内の噂やネット上に支払遅延の情報がでていないか?
●業界内の噂やネット上に手形ジャンプの情報がでていないか?
●従業員に対する給与遅配の噂はないか?
●税金を滞納していないか?
●決済条件が長期化するなど支払い条件が悪化していないか?
<そのほかの情報>
●主要取引先が取引量を減らして、取引から撤退していないか?
●役員間または労使間で社内に重大な紛争が起きていないか?
●調査対象となる会社が夜逃げなどによって事実上の休眠状態に陥っていないか?
●代表者および役員に倒産歴のある人物がいないか?
※ リスクモンスターが調査した統計データは会員サイト内『アナリストモンスター』
から様々な指標や観点でご覧頂けます。
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【著者】リスクモンスター データ工場
会社の格付データの更新を中心業務として行うことに加え、与信管理サービスの
企画・開発や、会員企業の与信管理支援コンサルティングサービスの提供まで
担当する、いわばリスクモンスターの“心臓部”。
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