与信管理講座「ケースに学ぶ営業担当者の債権管理」(第1回)

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与信管理講座「ケースに学ぶ営業担当者の債権管理」(第1回)

                                     リスクモンスター株式会社 メルマガ事務局
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 <CONTENTS
   ■与信管理講座「ケースに学ぶ営業担当者の債権管理」(第1回)
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        ~与信管理講座「ケースに学ぶ営業担当者の債権管理」~     
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今回より、詳細な事例に基づくケーススタディ形式にて、 

取引の過程で営業担当者が注意すべき与信管理上のポイントを解説してまいります。

第1回 「小切手は現金ではない・紹介取引に要注意」

 

1. 取引形態・ルート 

今回のケーススタディに登場する各社間の関係・取引形態を図で表しております。 

下の【図1-1】をご参照下さい。 

 

【図1-1】

 

2. 取引経過
① 食料品卸業者のA社は、取引開始間もない与信限度500万円を設定している

取引先である。ビジネス商事は、既に取引のある食品問屋であるB社より、食 

品雑貨の販売に強いとの由で、A社の紹介を受け、散発的な小口の取引を始め 

ていた。 

② その年の10月に入ってからA社より急な注文で申し訳ないが正月用の食料品 

全部で700万円相当を納入して欲しいとの依頼があった。しかし、前月まで 

の取引での未決済残高(債権残)が、450万円ほどあり与信限度はほぼ一杯 

であった。 

③ ビジネス商事の担当者は、商品が季節性のものであるため注文金額が増加する 

のはやむを得ないとは言え与信限度をオーバーする訳にはいかないので、与信 

取引とせずにCOD(代金引換渡し)条件とすることにし、さらに出荷 も3回に分割して
納入することで合意した。 

④ 1回目、2回目の納入は、最需要期よりすこし前であったため、比較的小口取 

引となり銀行への振込み入金を確認した上で納品し、無事COD取引がおわった。 

⑤ 3回目は、年末の需要ピーク直前であったため、かなりの大口取引となった。 

また、指定納入日が、土曜日となったため、銀行振込の確認がとれなかったが 

1、2回目が順調に決済されたこともあり、ビジネス商事の担当者は、小切手 

も現金と同じようなものと考えA社振り出しの小切手(600万円)をもらい 

3回目の納入を実施した。 

⑥ 翌週にこの小切手を取引銀行経由、取立に回したところ、これが不渡りとなった。 

この結果、以前からの取引で発生した債権残450万円と今回の小切手600万円 

合計1,050万円が焦げ付き回収不能となった。 

 

3. 対応策と事後判明した事実 

① ビジネス商事担当者は、前の週に商品を納入したばかりであるため、まだA社 

の在庫として残っている可能性が大きく、そうであれば動産売買の先取特権に 

基づく動産競売か、もし転売されていたとしても物上代位による転売代金の差押が 

できると考え、直ちに調査を開始した。 

② しかしながら、ビジネス商事が、前週に納入した商品は、A社の大口債権者に 

即日転売されていた。 

③ 後日、A社は、他の大口債権者から債権者破産の申立をされて破産宣告を受けた。 

④ 一方、A社を紹介した食品問屋のB社は、A社に対してかなり高額の債権を有 

しており、また1年以上前からA社からの回収が遅れ始めていた。そこで、B社 

は、自分の債権を増加させないためにA社をビジネス商事に紹介したこと、そして 

今回の正月用の食品の取引も、最初はB社に依頼があったものの社が拒んだ 

ためビジネス商事に持ち込まれたらしいことも判明してきた。 

⑤ ビジネス商事がA社と取引を開始してからB社のA社に対する債権が、約1,200 

万円程度圧縮されていたのである。 

 

4. 問題点・ポイント・反省 

① 小切手は現金ではない 

ビジネス商事の担当者は、正月用食品の話があったとき、与信限度がほぼ一杯で 

あったため現金取引にしようと考え、さらに納品を3回に分割することにより、 

A社の履行能力・態度を検証し、またリスクを分散すべく知恵を絞っておりこの 

点は賢明である。 

しかし、1,2回目の取引が順調であったとは言え、3回目に小切手と引き換えに 

商品を出荷してしまったのは、いささか軽率であったと言わざるを得ない。 

現金取引(COD 条件)つまり相手に与信しないことを前提にする限り、小切手は 

現金ではないのであるから、小切手と引き換えに出荷をしてはならない。したがって、 

小切手を取立して回収が確認されてから出荷をするか、もしくは出荷を優先させる 

特別な事情があるなら、小切手を銀行保証小切手(自己宛小切手)とするべく 

交渉するか担保提供させて有担保取引とする要求をすべきである。このような交渉 

や要求をいろいろすることによって、A社がなにを考えているのか、意図がどこに 

あるのか、A社以外の第三者(他の大口債権者?)の関与があるのかないのか、 

さらにA社の営業内容や資金繰りなどが判ってくるものである。 

そして、ビジネス商事としては、異常性を察知したら本件取引を中止するだけでなく 

他方で既に履行した取引にもとづく売掛金債権が約450万円あることも念頭に 

置いて対処しなくてはならない。もし3回目の出荷の条件として価値のある確実 

な担保が取れるのであれば、既存の債権450万円もこの担保で保全されるよう 

担保設定契約に工夫をこらすことが重要である。異常性を察知したら、目先の 

問題だけでなく取引全体を俯瞰した上で、ネットのリスクを軽減すべく対処しなければ 

ならない。上手に交渉することによって無担保債権を担保付債権に変えることも 

できるのである。 

 

② 取引のきっかけ・紹介に注意する 

取引を行うきっかけは、友人・知人からの紹介であったり、同業者や銀行などか 

らの話であったり、また商権獲得のために自ら見つけてきたものなどいろいろな 

ケースがあると思われる。 

しかしどんなきっかけであれ、まず第一に取引先の経営内容全般を冷静に分析 

して与信判断を行うことが重要である。銀行の紹介だからといって、銀行が取引の 

保証をしてくれる訳ではないことを肝に銘じるべきである。第二に、紹介者の紹介 

理由や意図が何なのかをよく確認することである。特に、紹介者が既に取引を 

している相手を紹介してくる場合は、紹介者のリスクヘッジやリスク分散のために 

取引をさせられているのではないか十分調査しておかなくてはならない。 

本件のケースでは、B社が、A社に対して滞留債権を抱えており、これ以上 

債権を増加させたくない、一方取引を継続しなければA社が破綻する可能性 

があるため、ビジネス商事にA社を紹介して商品を納入させることでA社の 

延命を計ったものである。そして、社が延命し、ビジネス商事が取引をした分 

だけB社の債権が圧縮され、ビジネス商事がその分焦げ付き債権を作って 

しまった。結果として、ビジネス商事が、A社のB社に対する債務の一部を 

肩代わりさせられてしまったことになったのである。 


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【著者】リスクモンスター データ工場

会社の格付データの更新を中心業務として行うことに加え、与信管理サービスの
企画・開発や、会員企業の与信管理支援コンサルティングサービスの提供まで
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