与信管理講座「倒産事例から見る財務指標の傾向」(第1回)

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与信管理講座「倒産事例から見る財務指標の傾向」(第1回)

                                     リスクモンスター株式会社 メルマガ事務局
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 <CONTENTS>
   ■与信管理講座「倒産事例から見る財務指標の傾向」(第1回)
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        ~与信管理講座「倒産事例から見る財務指標の傾向」~     
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与信管理上注目すべき財務指標を、倒産企業の分析データから解説しております。

第1回 「売掛債権回転期間」

 

1. 「売掛債権回転期間」とは?

売掛債権回転期間とは、売掛金が計上された時から、実際に現金で回収するまで、

どれくらいの期間がかかっているかを表します。

売掛債権回転期間が短ければ売掛金の回収が早く、逆に売掛債権回転期間が

長ければ、回収まで長い時間を要するということになります。

売掛債権回転期間はつぎの算式によって求めることができます。


売掛債権回転期間

=売掛債権(売掛金+受取手形+割引手形+工事未収入金+裏書譲渡手形)÷平均月商

 

2. 倒産事例分析

次に、最近の倒産事例より、売掛債権回転期間の推移を見ていきます。


1.株式会社インネクスト

(札証アンビシャス上場、機械器具卸売業、2011年9月9日破産手続開始、負債総額10億円)

 

①会社概要、倒産経緯

・2003年設立の中小型液晶向け製造・検査装置製造業者。

設立4年目の2007年2月に札証アンビシャスへ上場。

・不正経理の発覚により2011/6/17付で札幌証券取引所より監理銘柄に指定。

・これにより対外信用が大きく失墜し、大型受注の獲得も出来ず経営悪化。

スポンサーによる再建を企図するも目途が立たなかったことから、破産手続開始となった。

 

②売掛債権回転期間の推移

決算期                  2008/6   2009/6   2010/6

売上高(千円)          505,821 1,394,875   1,484,638

売掛債権回転期間(ヶ月)      3.1          5.9             7.2

 

・売上が2008年から急増しているものの、売掛債権回転期間が長期化、

  売上が伸びても回収が伴ってないという点で、極めて不自然である。

 

→本件は、『粉飾決算』の典型的なケースといえる。

売掛金を相手勘定とした売上高の前倒し計上および架空計上を行っており、

2007/6期~2011/3期までに架空売上が約24億円、粉飾利益が約10億円。

2010/6期は売上の約70%が粉飾であり、本来であれば毎期赤字計上となって

いたはずで、上場以来粉飾計上を続けていた模様。

 

2.株式会社シェグ橋梁研究所

  (建築設計業、2011年7月26日破産手続開始、負債総額5億円)

 

①会社概要、倒産経緯

・2001年設立の建築設計業。橋梁工事設計の他に、同事業のノウハウを

活かした独自の住宅基礎工法「100年基礎」を主力商品として展開を図っていた。

・主力仕入先にジャスダック上場企業㈱アイ・テックを、主力販売先として

同社関連企業の㈱アイ・テックストラクチャーを挙げ、本社も同社敷地内に所在するなど、

取引面等での関連性を色濃く打ち出していた。

・しかし、昨今の景気低迷の影響から受注件数が急激に低下し、資金繰り破綻に至った。

 

②売掛債権回転期間の推移

決算期              2007/2   2008/2  2009/2   2010/2

売上(千円)          267,216  282,461  567,600  571,204

売掛債権回転期間(ヶ月)  1.5           7.5          8.5           6.8

 

→2007/2期1.5ヶ月に対して、2008/2期7.5ヶ月に長期化したことで、回収遅延の発生

又は売上の水増しが行われていたと予想され、運転資金調達目的での借入増加が、最

終的には財政状況の逼迫を招いた。      

 

3.ポイント

支払条件などは各業界により異なるため、売掛債権回転期間は業界の平均数値と比較し、

その期間の長短を分析します。業界平均などに比べて、売掛債権回転期間が長い場合、

次のような理由が考えられます。

 

①焦付きの発生・内包

②不渡手形の存在

③手形ジャンプの発生

④延払等長期回収債権の混入

⑤押し込み販売

⑥粉飾(売掛金を相手方にした架空売上の計上)

⑦融通手形の存在

⑧回収条件の悪化

⑨その他

 

売掛債権回転期間が長期化する場合、いずれにせよあまりよい理由は考えられません。

リスクモンスターでは、売掛債権回転期間の推移に着目し、前年度との増減幅を比較し、

倒産確率を集計致しました。これを見ると、やはり売掛債権期間の増減幅が大きいほど、

倒産確率は高くなる傾向が出ております。

 

売掛債権回転期間の急激な変化が見られた際は、個々のケースごとに調査を行い、

その原因を把握することが必要です。

 

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【著者】リスクモンスター データ工場
会社の格付データの更新を中心業務として行うことに加え、与信管理サービスの
企画・開発や、会員企業の与信管理支援コンサルティングサービスの提供まで
担当する、いわばリスクモンスターの“心臓部”。
分かりやすく精度の高い情報を、お客様により早くご提供することをモットーにしている。
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