りすもん与信管理講座「信用調書の活用する場合のポイント②~海外信用調書を利用する場合」

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りすもん与信管理講座「信用調書の活用する場合のポイント②~海外信用調書を利用する場合」

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りすもん与信管理講座
「信用調書の活用する場合のポイント②~海外信用調書を利用する場合」
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 海外企業の信用調書は、現地調査会社と提携している場合が多く、対象国の
調査員が直接現地へ出向いたり、電話取材による調査を行うことにより作成
されます。企業の状況が10~15ページ程度でまとめられており、与信判断の

材料として非常に適しています。

【信用調書の内容】

 信用調書は、対象国や信用調査会社によって多少異なりますが、おおむね
次のような項目が記載されています。

① 評価、クレジットリミット(与信限度額)
② 企業概要、登記事項 (商号、所在地、設立年月日、資本金、株主、沿革など)
③ 代表者、役員 (生年月日、現住所、就任時期、過去の業界経験など)
④ 営業状況 (営業品目、営業方式、主要仕入先など)
⑤ 業績、財務状況 (既往の売上、利益、配当、業績、取引銀行、借入状況、など)
⑥ 支払(ペイメント)履歴 (支払に関する情報。支払遅れが発生していれば
  分かる。必ず掲載される訳ではない)
⑦ 公的記録 (訴訟記録、特許、担保設定など)

 決算情報を報告する義務のない国においては、公的に開示されることはなく
取材によって収集されます。ゆえに、決算情報などが判明しないケースも多く
発生します。但し、中国本土(香港・台湾のぞく)に登記されている企業は、
上場企業・未上場企業を問わず、また外資企業、内資企業を問わず、工商行政

管理局(通称:工商局)に毎年財務情報を提出する義務がある為、比較的入手

できるケースが多いです。(2015年11月現在)

【入手費用と入手までの速度】

 信用調書にかかる費用は対象国や調査会社によりさまざまですが、一般的に
新規調査1件あたりのコストは2万円から3万円程度で、翻訳料金が必要な場合
もあります。また、調査を急ぐ場合は速度料費用が発生する場合もあります。

通常の新規調査は3週間から1ヶ月、「超特急」では1週間程度の日数を要します。
既調(以前作成された調書のコピー)が利用できる場合もありますが、新規調査
しか扱っていない場合などもあります。(信用調査会社により、取り扱いは様々
です。)

【海外調書依頼の注意点】

◆対象先の特定
 海外調書の場合でも国内と同様、調査対象は企業単体の調査となります。対象国
の現地調査会社が調査する場合が多いので、グループ全体(特に国をまたがった)
調査は困難です。 また、海外企業には慣用化されている会社名と登記商号が
異なる場合や所在地の相違が多々あります。確実に特定を行う為に提供できる
情報(名刺やホームページなど)を依頼時に調査会社に提供しましょう。
国内が窓口の調査会社でも現地の調査会社へ依頼する場合が多く、国内調査と
違い、中間的な報告や確認はされず調査が完了する場合もあります。特定が
できない情報で依頼した場合、「存在しない」という報告書になる場合があります。
現地調査員を少しでも動かすと、調査費用も発生しますので注意しましょう。

◆調査指定事項がある場合
 具体的な調査要望がある場合、調査会社によっては異なりますが、基本料金内で
調査を依頼することが可能です。ただ、基本的な調査項目と同様で公的な開示が
ない場合は取材によって情報収集される為、先方の開示姿勢に委ねることになり
判明しないことのほうが多いようです。

◆入手の時期
 海外企業は12月が決算月の場合が多く、入手できる場合は翌年の6月~
7月ごろに更新されることが多いです。決算が収録されるかは調査してみないと
分からない場合が多いですが、最新情報を入手したい場合は決算期の6ヵ月後を
めどに依頼をかけるようにしましょう。

【海外信用調書を読むには】

 これまで説明したように、取引先の信用調査や営業拡大に大変有効な信用調書
ですが、読む時には次のような点に注意する必要があります。

① 国内調書と比べると、評価コメントや調査員によるコメントは入らず、
  あくまで判明した事実や数値を報告することが多いです。また、対象国
  や調査会社によって評点やランクのレベル分けはそれぞれ異なります。
② 国内調書ではあまり見かけない支払い状況(Payment)が報告される場合が
  ありますが、具体的な取引の一覧のように表示されている場合でも、
  全取引が載っているわけではなく、単に支払い振りが良いか悪いかの参考
  としてみるようにしましょう。ネガティブな記述は要注意ですが、問題なし
  と記載があっても必ずしも安心はできません。
③ 国内調査と同様で信用力に対する結論は信用調書に依存せず、最終判断は
  あくまで自社で行います。取引先の可否の判断については、最終的に自社の
  責任となります。大きな取引や重要な取引をするときは、自社で現地調査も
  行うなど信用調書に責任を転嫁することがないようにしましょう。

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